MMTのまとめ

突然降って湧いたようなMMT(Modern Monetary Theory:現代貨幣理論)に対して、各方面から批判が集まっているようですが、私にはMMTが言っていることが正論のようにしか思えません。

そんなMMTについて、中野剛志氏による解説が非常にわかりやすかったので、以下にまとめました。

 

【参考動画】


「日本の未来を考える勉強会」ーよくわかるMMT(現代貨幣理論)解説ー平成31年4月22日 講師:評論家 中野 剛志氏

 

◆日米英のように、自国通貨を発行できる政府(政府+中央銀行)は、デフォルト(債務不履行)しない。デフォルトの事例は、外貨建て国債のみ。

政府は、いくらでも、好きなだけ支出できる(変動為替相場制の場合)。財源の心配は無用。

ただし、日本国内の供給能力の限界までが、政府の支出の限界になる(それ以上、政府が支出すると、過剰なインフレになる)。

 

◆租税は、財源確保の手段ではなく、経済を調整する手段。
=税金は財源ではない。

→事実:消費税を課した結果、消費が抑制されている。

 

MMTに対する批判

財政赤字の拡大は、インフレを招く。

その通り。現在、日本では、デフレで困っているのだから、デフレを脱却できる。

 

-2 財政規律がなくていいというのは、いかがなものか。

自国通貨建ての国債発行では財政破綻しないのだから、プライマリーバランス黒字化やGDP比政府債務残高は関係ない。

→財政規律の指標はインフレ率にしてはどうか。

 

-3 いったん財政規律を弛めて財政赤字の拡大を認めたら、高インフレになっても、政治は、国民が嫌がる歳出削減や増税を決断できない。

国会が予算を決める「財政民主主義(憲法83条)」の否定である。

→事実:実際に、日本の政治は、デフレなのに消費増税をしている。

 

財政赤字の拡大は民間貯蓄の不足を招き、金利を高騰させる。

財政赤字の拡大が、民間貯蓄の不足を招くことは、あり得ない。

銀行は、個人や企業から集めた預金を元手に貸出を行っているのではなく、銀行が貸出を行うことで、預金が生まれている(信用創造)。
=貸すとお金が生まれ、返すとお金が消えるだけ。銀行だけが、銀行預金という形式の貨幣を創造できる。

貸出が預金を生むという原理は、政府に対する貸出でも同じ。

政府の財政赤字は、民間貯蓄の制約を受けない。貯蓄がなくても、ただ貸すだけ(国債発行)で、巡り巡って民間の貯蓄(預金)が生まれるため。

 

◆日銀の出口戦略(量的緩和の終了)により、国債金利が高騰する?

→事実:量的緩和で増えているのは銀行の日銀当座預金(マネタリーベース)で、民間の預金(マネーサプライ)が増えているわけではなく、ただ国債金利が下がっているのみ。

→むしろ低金利により銀行の収益を圧迫している(デフレの一因となっている)ので、早く出口戦略をすべき。

☆また財政出動によってインフレ(好景気)になった場合でも金利は上昇するが、それは心配事ではなく、日本の現状においてはデフレ脱却として喜ぶべき話。

 

MMTは閉鎖経済を前提としていて、開放経済では通用しない?

→主流派の経済学においては、開放経済下では、財政赤字の拡大で内需が増えると、資金がひっ迫して金利が上昇し、通貨高になり、外需が減り内需増を相殺するので、財政政策は無意味であるというが、MMTによれば、資金がひっ迫することはない(銀行がただ貸すだけで良い)ので、金利も高騰しない。

以上。

 

現在、日本では、財政規律のためには基礎的財政収支プライマリーバランス)の黒字化が必須であると説明して、消費税率を上げようという話になっています。

しかし、MMTによれば、お金は銀行の貸出によってのみ生まれるというのが事実であるとわかります。

よって、税金は、財源ではなく、あくまでも経済の状態を調節するための手段であり、プライマリーバランスの黒字化には何の意味もないと認識できますし、さらには民間の需要を減らす強大な圧力となる消費税増税は経済活動を不活性化させるだけの誤った政策であるとわかります。

MMTに基づいて考えれば、デフレ期でも銀行がお金を貸し出すことができる状態を維持すること、すなわち財政出動する(必然的にプライマリーバランスを赤字化させる)ことにより、デフレ下でも需要を維持することこそが、真の「財政規律」に繋がると考えられますし、逆にインフレ期には、金融の引き締めと増税(必然的にプライマリーバランスが黒字化する)により、お金の価値を適正に維持することが、財政規律に繋がるでしょう。